打ち揚げ煙火の構造

 


花火玉

花火玉

よく花火大会で「尺玉が揚がる」「3尺玉が目玉」という言い方をしますが、煙火はまさに丸い「玉」なのです。上のタイトルの横にある写真が花火玉ですが、表面は和紙で覆われているのでこういう色をしています。この写真の玉の場合、打ちあがっていくときに尾を引いていくのですが、その尾のための火薬が2つ上についています。通常、花火玉は丸いものです。大きさはさまざまです。「3尺玉」というのは、直径が3尺(90センチ)という意味ですが、これは日本でも最大級の大玉です。「尺玉」と呼ばれるもので直径1尺(30センチ)。スターマインなどで連発で上がるものはもっと小さなものです。下の写真(打ち揚げ日記にあるものと同じ)のものは直径が9センチから12センチのものですが、こういう小さな玉でも十分迫力ある花火が楽しめます。

図1.煙火の玉

上の写真を見ると、花火玉はどれも同じに見えます。しかし中に入っている火薬の種類や構造によっていろいろな形に開くのです。これが煙火のすごいところで、同じ玉なのに中の構造を変えるだけで色や形が変わるのです。

さて、日本で打ち上げられている花火(煙火)は中の構造の違いから、割物(わりもの)、ポカ物、小割(こわり)の3つに分かれます。下の表はそれぞれの代表的な花火玉の種類です。

花火玉のタイプ 玉の名前
割物 菊、牡丹、冠菊
ポカ物 蜂、やし、分砲
小割 千輪菊

それではそれぞれのタイプについて説明します

割物煙火の構造

割物は、日本・中国といった東アジアでよく打ち揚げられるタイプの花火玉です。図2にその構造を示します。


図2.割物の構造

一番外側は「玉皮(たまかわ)」と言われる紙でできた殻です。半球状のお椀のようなものを2つ張り合わせます。中には割薬(わりやく、または割火薬)と星(ホシ)という火薬が入っています。星は燃えるときに光る火薬で、 この残像が花火の形として我々の目に残ります。割薬は光るものではなく、爆発を起こして星を押し出すのが役割です。さらに、玉の中心にある割薬に引火するためのものが、「導(みち)」とか「親導(おやみち)」と呼ばれる導火線です。花火玉が撃ちあがるときにこの導の下に火がつきます。そして玉が上空にたどり着いたところで割薬に引火するのです。

上空で割薬が爆発を起こし、星に引火するとどうなるでしょう?星は光り始めますが、爆発によって放射状に押し出されていきます。そこに引力が加わるので、星は放物線を描きならが広がっていきます。この時に星全体がきれいに、満遍なく球状に広がっていくのが理想とされます。

菊と牡丹

割ものの花火にはいろいろな名前がつけられますが、基本中の基本が菊と牡丹です。ともに日本古来の花の名前で呼ばれていますが、この2つは星の見え方によって区別されます。星が尾を引いて広がるものが「菊」、尾を引かないものが「牡丹」 です。図3が菊と牡丹ですが、この2つの違いは写真で表現するのは非常に難しいものなのです。実物を見ると違いがよく分かります。当「PyroWeb 花火と煙火のホームページ」では、Javaによる花火図鑑も作っていますので、そちらでもご覧下さい。

 図3.菊(上)と牡丹(下)

星の構造

割り物の星と割薬はともに火薬ですが、その働きが違います。割薬は爆発を起こして星を押し出すだけですが、星は光って観客を魅了するいわば主役です。花火の星は図4のような同心球構造をしています。


 図4.星の構造

中心に「芯」というのがありますが、これも火薬です。しかし場合によってはコルク片などを芯に使うこともあるそうです。その回りに赤と緑の層がありますが、これはそれぞれ燃えたときに赤、緑の色を出す火薬なのです。星を造るときは、芯の回りに粉の火薬をまぶして層を厚くしていきます。ある程度できたら天日で乾かして、また次の層の火薬をまぶす。かなり根気の要る仕事ですね。この作業のことを「掛ける」と言い、製造法のことを「掛け星」と呼びます。これに火が付くと外の層から燃えて行くので、最初に緑色を発色し、次に赤に変わって最後に黄色く光ります。

色変化と芯

最近は次に紹介するポカ物も増えましたが、まだまだ日本の花火大会の主役は菊や牡丹などの割り物です。動きは単純ですが丸く開くところが日本の花火の特徴であり、美しさでもあります。最近では菊も牡丹も単発で揚げることは少なく、何発も連続してあげることが多くなっています。しかし同じ色の花火は続けて揚げるように、コーディネートはされているようです。さて、花火大会の花火をよく見ると、花火によって開く途中で色が変わるもの、1つの玉が2重構造になっているものを見ることができます。

色が変化する菊は「変化菊」、芯の入った牡丹は「芯入り牡丹」というように呼ばれます。色変化を起こすには、図4のような星を使います。芯入りの場合一番外側の層を「親玉」、中の層を「芯」と言います。図2は芯入りの玉の構造ですが、玉の直径が大きくなるとさらに三重、四重と芯の数を増やすことができます。芯が二重(親を合わせると三重)のものを「八重芯(やえしん)」、芯が三重(親を合わせると四重)のものを「三重芯」と呼びます。芯が二重になったものをなぜ「八重芯」と呼ぶかというと、これができたころは「これ以上のものはできない」と思われていたので、「幾重にも重なってきれいなもの」という意味で「八重」という名前がついたそうです。その後の技術の進歩によって三重の芯のものができた時は仕方ないので「三重芯」と名づけたとか。そんなわけで八重芯と三重芯は名前の数の大小が逆転しています。

芯入りの花火は結構見かけますが、八重芯、三重芯となるとかなり大きな玉になるのでそうめったにお目にかかれません。これらはスターマインという連発ではなく、1発ずつ上げて味わうというものです。花火大会ではなく競技会に行くと見ることができます。

ポカ物


図5.ポカ物の構造

ポカ物の花火は外見は割物と同じく和紙でできた玉で、親導の先が出ているのが見えます。しかし中の構造が違います。図5のように、割薬は少なく、星の代わりに大き目の仕掛けが入っています。ポカ物の仕掛けはそれ自体が小さな花火になっており、火がつくと光りながら「自らの力で」飛んでいきます。そのため、割物のように割薬で爆発を起こす必要はありません。ポカ物の花火にも割薬が入っていますが、割物よりもずっと少なくなっています。ポカものの割薬の役目は、殻を割ること(このとき殻を「ポカっと」割るので「ポカもの」と言う)、それに中の仕掛けに火をつけることです。

ポカ物は割ものに比べて割薬の量が少ないので、爆発力は弱くなります。しかし仕掛け自体が大きいため、見た目は派手に見えます。また割物の星は放射状に押し出されるだけですが、ポカものの仕掛けは独自に動くため、不思議な動きを見せるものもあります。

蜂、分砲、椰子(やし)

ポカ物の代表として3つほど紹介します。

蜂は、仕掛けが螺旋回転しながら飛んで行くものです。飛ぶ時にヒューヒューという音を立てるので、「蜂」と命名されています。「銀蜂」とも言います。

分砲は10個ほどの星が殻から放り出されるのですが、しばらくするとそれぞれの星が2つに分かれます。星が途中で進む方向を変えたように見えます。

椰子は星より大き目の仕掛けが放射状に広がるものです。椰子の葉のように見えます(図6)。


図6.椰子

小割

小割(こわり)というのは花火が「入れ子」になったものです。 大きめの花火の玉の中に小さな花火玉が幾つか入っています。 これが破裂すると爆発直後にはまったく光らないのですが、一瞬遅れてたくさんの 小型花火が同時に開きます。


 図7.小割もの

中身は図7のようになっています。ポカ物の仕掛けが小さな煙火玉になっているというものです。これが上空で開くと、まず親玉が開発し、しばらくすると10数個の子玉が開きます。親玉の開発は音だけでほとんど見えません。しばらくしてから子玉がたくさん同時に開くという仕掛けです。

小割りの子玉がそれぞれ菊になったものを、「千輪菊」と言います。また子玉の他にも星をまぜて親玉が開いた後で、子玉が重なって開くものを「浮き模様」と言います。 Java花火に小割り浮き模様のシミュレーションがあります。

 

 

トップ

花火の世界の解説ページ

花火と煙火

玩具用の花火とプロ用の煙火

玩具花火

玩具花火の解説

打ち揚げ煙火の構造

煙火の中はどうなっているか?

煙火の打ち揚げ

煙火はどうやって上げるのか?

仕掛け煙火

仕掛け煙火の仕組み