煙火の打ち上げ

 


花火玉

 

煙火筒

先に紹介したように、打ち揚げ煙火はすべて玉の形をしています。これを上空に打ち揚げるには筒を使います。筒はスチールやアルミなどの金属でできているものがほとんどです。紙でできているものもありますが、耐久性の問題があるため、使う回数に制限があります。筒は底は閉じており、上は開いています。

また玉と筒の大きさは関連があります。玉を揚げるのには、ちょうどよい大きさ(直径)の筒を使う必要があります。通常玉の大きさは尺寸法を用いて号数を決めます。たとえば3号玉は直径が3寸(9センチ)、5号なら5寸(15センチ)という具合です。玉の号数によって使う筒は違います。


図7.煙火の打ち揚げ筒

上の図7は花火筒の写真です。手前から順番に5号筒(直径15センチ)、4号筒(直径12センチ)が2本、3号筒(直径9センチ)が2本です。筒自体はただの円柱です。使う時は写真にあるようにしっかりとした台座を造り、そこに紐などで縛り付けて固定します。地面に杭を打ちつけてそれに縛り付けるということもあります。

打ち揚げ手順

図8.花火の打ち揚げ

図8に煙火玉の打ち揚げる方法を示しています。煙火筒は(1)のように上が開いており、底が閉じた単純な構造をしています。まずここに(2)のように火薬を入れます。これは「発射薬」というもので、花火玉を上空に打ち揚げるための火薬です。次に(3)のように花火玉を入れます。このとき親導を下にして入れます。発射薬に点火すると(4)のように筒の底で爆発が起こり、 その勢いで玉が上空に打ちあがります。この時煙火玉の親導にも引火し、それが上空に上がったところで中の割薬に引火します。というわけで発射薬は玉を上げ、さらに玉に引火するわけです。

さて、それではどうやって玉の下にある発射薬に引火するのでしょう?これにはいろいろな方法があります。投げ込みと呼ばれる方法と、導火線を使うのが一般的です。投げ込みというのは、筒の口から中に火のついた紙片を投げ入れる方式です。筒は玉よりも少し大きめにできているので、玉と筒の間には隙間があいています。投げ入れられた紙片はその隙間から下に落ちて発射薬に点火します。また、手持ち花火の火を筒の中に注ぎ入れるという方法もあります。この場合も火の粉が玉と筒の間の隙間から落ちて発射薬に点火します。

導火線は下の写真(図9)のように装着します。発射薬を袋に入れて、それを玉の親導のところにはりつけます。そこに導火線をつけて、玉の上まで回してさらに筒の外まで出します。図8は玉を筒に入れるところですが、茶色の導火線がついていて、それが右の畳板の裏にまで伸びているのが分かります。畳は安全のためのもので、人はこの畳の裏から火をつけることで、発射薬に引火することができるわけです。ちなみに煙火に使われる導火線を「速火線(そっかせん)」と言いますが、1秒あたり何十メートルも進む非常に早く火が回ります。ですからこの場合、火をつけたら逃げる時間はありません。点火した瞬間に打ちあがります。


図9.速火線

早打ち

投げ入れと導火線に引火する方式は非常に原始的な方法ですが、花火師の仕事の基本であると言えます。しかしどちらの方法も、時間内に打ち揚げる玉数が限られてしまいます。玉の数が筒の数よりも多いばあい、同じ筒を使って次の玉を打ち揚げなければなりません。打ち揚げた後、次の玉を上げるまでには、

  1. 筒の中に火が残っていないか確認する
  2. 発射薬と玉を入れる
  3. 点火する

という手順が必要になります。暗い中でこのような作業をやるのは大変です。確認作業もあるので、そう素早くできるものではありません。これでは間延びがしてしまい、大量に打ち揚げを行う花火大会では不可能です。そこで1本の筒で次々に打ち上げる方法が、早打ちというものです。

図10.早打ち

図10が早撃ちの手順です。まず(1)のように花火玉の下(親導のところ)に発射薬を入れた袋をはりつけます。また玉の上には取っ手をつけておきます。地面に立てた筒には(2)のように底に焼き金を入れておきます。これは金属の板を赤くなるまで焼いたものです。(1)の花火をこの筒の中に落とします(3)。すると底まで落ちた玉のうち、発射薬が焼き金にあたり引火して爆発し、玉は(4)のように打ちあがります。筒の中には焼き金が残りますので、次の玉を続けて打ち揚げることができるのです。早打ちは実際に球を筒に入れる人と、花火玉をリレーで渡す人がいるので2人から数人で行います。チームの息が合えば5秒くらいの間隔で玉を次々に打ち揚げることができます。爆発によってまた焼き金が熱くなるので、この筒は最後まで使うことができます。

連続打ち・電気発火・コンピュータ制御

さてここまで紹介してきた打ち揚げはどれも「人が発射筒のそばにいなければならない」という問題点があります。花火事故にはいろいろありますが、花火が筒の中で引っかかったり、発射薬の不足などで筒の中で爆発するということがあります。これを「筒ばね」というのですが、これが起こるとそばにいる花火師とて、無傷ではいられません。そばには他の花火玉もたくさんあるので、2次災害も起こり得ます。そのため最近の花火大会では、打ち揚げの時には花火師が筒のそばにいないですむ方法がとられます。

まず第一に1つの筒で玉を1発上げる。ということです。3000発上げる花火大会には3000本の筒を用意して、昼間にすべて設置を終えてしまいます。点火はすべて導火線を使います。前に書いたように速火線は火の伝わりが非常に早いので、隣の筒同士で速火線をつなげば、連続して玉を上げることができます。このようにすると「スターマイン」と呼ばれる連続打ち揚げも、一度の点火でできるようになります。

速火線への点火も、電気発火という方式がとられます。これは「点火玉」と呼ばれるニクロム線で作ったコイルのようなものを使います。これは数ボルトの電圧をかけると火がつきますので、速火線に火をつけることができます。電線を引っ張れば、遠くからでも火がつけられるわけです。 遠くからスイッチを押すだけで、安全に花火を打ち揚げることができるようになったのです。

電気スイッチのオン・オフで花火が上がるのであれば、それをコンピュータでコントロールすることも可能です。スターマインをやるにしても、速火線をつなぐという方法ではなく、1つ1つの筒につけた発火玉を、連続して点火することで可能になります。また0.5秒おきに玉を連続発射するというように、人間が手で行うことができないようなコントロールも可能です。

 

図11.スターマインの打ち揚げ

 

玉の構造、筒の構造、発射薬を使うという点は昔ながらのメカニズムをそのまま使っているのですが、その上での点火のコントロールには最先端のコンピュータ技術を取り入れています。発射タイミングというのは、スターマインの演出に直接影響が出てくるものです。これからも演出という面で、技術が進歩して我々の目を楽しませてくれるのでしょう。

 

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